前述した『碁盤割商家の暮らし』(山本花子 愛知県郷土資料刊行会)は、朝早い商家の日常を次のように伝えている。
「商家の朝は早い。暗いうちに起きて、掃除や食事の支度をする。とくに門を掃いて打ち水をする。自分の家の前だけではなく、向三軒両隣にも及ぶように、との言い付けである。神仏のお供えは母、料理、配膳は私、掃除は雇い人の仕事である。掃除が一通り済み、さっぱりして神仏にお詣りし、お互いに朝の挨拶をして、朝食に箸を付ける。これも麦飯に味噌汁、漬物が通例で、それ以外は海苔、卵、佃煮まで。卵も半熟か、味噌に入れ、朝食に副食の煮炊きはしない。
卸部の手代は、見本の二合入りの酒瓶の入った袋を提げて、縞の着物に角帯を締め、小売屋回りに出掛ける。小売部の小僧は厚子の襦袢を着て前掛けをしっかり締め、鳥打帽子(短いひさしのついた平たい帽子)をかぶって出掛ける。厚子というのは堅牢な地厚な織物で、紺無地か大名縞が多い。厚子地で仕立てた袢襦を厚子と呼んでいた。」
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