名古屋の人間に限らず、日本全国でも「坂角(ばんかく)」という名前を知らない人はまずいないだろう。「ゆかり」のブランドで知られた海老せんべいの会社である。そこで質問である。では「坂角」という名前の由来は何かご存じだろうか?
それは創業者の名前から取ったのだ。創業者の名前は、坂角次郎である。
坂角次郎は、明治8年(1875)生まれ。南知多町豊浜で2年半にわたって、海老せんべい作りの修業奉公をした。そして明治22年に14歳の若さで創業した。創業の地は東海市横須賀町三ノ割61だ。掲載した写真はまだ10代だった頃の貴重な一品である。
坂角次郎が作り始めたのは「海老はんぺい」を加工して貯蔵できるようにした「海老せんべい」だった。「海老はんぺい」というのは、当時おやつのように食されていたものだった。それを乾燥させて仕上げ焼きしたのが「海老せんべい」だ。
だが、この坂角次郎は40代の若さで逝去してしまった。創業者は「人の役に立つ商いをしよう」「人に喜ばれる仕事をしよう」と口癖のようにいっていたという。ギブアンドテイクではなく、ギブアンドギブの精神だ。
その遺志を継いだのは、その子の鐐三で、二代目当主になった。鐐三は、海老せんべいの機械焼きを始めた。
この鐐三はお酒が好きで、酒の肴として、海老せんべいを自宅で焼いて食べていたという。海老せんべいは、粉の中に少量の海老が入っているのが普通だった。海老そのものをふんだんに使って焼いて食べるのは、贅沢だった。
その贅沢品を旨そうに食べる二代目を見ながら、そこから商品開発のヒントを得たのが三代目の誠氏(現会長)だった。そこで誕生したのが「ゆかり」だ。「ゆかり」は7割ぐらいが海老であり、そのように食べるのは贅沢過ぎて、当時なかった。
その「ゆかり」というネーミングも良かった。「ゆかり」という文字を辞書でひいてみると「ゆかり 縁 なんらかのかかわりあいやつながりのあること。因縁。例=文豪ゆかりの地」などと載っている。つまり「ゆかり」は、人と人とのご縁をつないでいきたいという想いのこもった商品だ。だから1枚1枚大事に包装した。「ゆかり」の発売は昭和41年(1966)で、それが会社発展の原動力になった。
坂角総本舖は〝企業理念〟を標榜するだけあって、創業以来の理念を大事にしている。その理念を感じさせるのは、鮮度へのこだわりだ。
本社は、東海市荒尾町甚造15‐1。
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