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第1部 幕末の部

安政3年(1856)
その5、篤姫、将軍家定に嫁ぐ
――その時名古屋は・・・大暴風雨で大変な被害、飢饉を招く

篤姫が将軍家定に嫁ぐ

 安政の時代に、NHK大河ドラマで知られるようになった薩摩の天璋院篤姫が登場する。

 嘉永6年(1853)6月、第12代将軍家慶が死去した。次の将軍になったのが家慶の四男家定である。島津家の分家に生まれた篤姫は薩摩藩主島津斉彬、さらに右大臣近衛忠熈の養女となって、安政3年(1856)11月に第十三代将軍徳川家定の正室となり、大奥に入った。

 この結婚は、もちろん島津家が幕府内部に食い込もうという意図で行われた政略結婚だった。ところが安政5年7月に家定が急死。2年にも満たない結婚生活であった。続いて同月、島津斉彬までもが薩摩で急死した。家定の死後、篤姫は仏門に入り天璋院との号を与えられた。

 篤姫は、家定の死後も徳川家存続のため奔走した。大政奉還の後、旧幕府軍は鳥羽伏見の戦いに敗れ窮地に立たされた。徳川家を救い官軍による江戸城攻撃を回避するため、篤姫は十四代将軍の正室和宮とともに力を尽くした。江戸城を無血開城に導いた篤姫は、和宮らとともに大奥を後にした。

相次ぐ災害が愛知県を襲った

 篤姫が輿入れした安政3年(1856)頃、尾張の民衆は苦しんでいた。嘉永7年(1854)の「安政東海地震」の余震は、翌年の安政2年まで続いた。

 その恐怖も冷めやらぬ同年7月、暴風雨が尾張を襲い、河川が氾濫した。『新修名古屋市史』によると、矢田川の堤防が決壊し、瀬古村以東の村が冠水、倒壊・流出した家屋が145軒、床上浸水した家屋が422軒に及んだ。また、庄内川右岸一帯、庄内川と矢田川に囲まれた福徳三郷、嘉永3年の洪水でも被害が大きかった小田井輪中も冠水した。天白川と山崎川も破堤し往来が寸断され、名古屋城下でも駿河町以東や巾下(名古屋城の西側)一帯が冠水した。

 さらに8月、伊勢湾一帯を高潮が襲った。波の高さは沿岸部では人家の軒上まで達したといい、安政東海地震による津波でも被災した。大代官、鳴海、横須賀、佐屋の四代官管内で破堤した。堀川をさかのぼって尾頭橋付近まで侵入した高潮によって船の横転や木材の流出などが起こった。船や木材にせき止められた水は堤防を越えて村々に浸水し、多くの田畑を水没させた。

 高潮に襲われた愛知郡の熱田前新田(現・名古屋市港区築地)では、高潮に襲われ、堤防の決壊により、床上浸水462軒、流出12軒、被災者2千620人(うち死者・行方不明者45人)という被害を出した。沿岸部の村々は、高潮を予想しておらず、特に宝来新田(現・名古屋市港区多加良浦町近辺)、永徳新田(現・名古屋市港区稲永新田)などの伊勢湾に突き出た地域で溺死者が多かった。水害は、その後も毎年のように続いた。安政4年の5月と7月に起きた洪水は、名古屋市以外にも大きな被害を与えた。[参考文献『新修名古屋市史』(名古屋市市政資料館)]

その時、名古屋商人は

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