この年は、秋から年末にかけて銀行が取り付けに遭った。それも全国規模で、激しいものになった。
銀行取り付けの嵐は、11月末から関西を起点として、全国に吹きまくった。特に関西地方と九州が激甚であった。預金取り付けや、休業に陥った銀行は、大正9年(1920)の大反動の場合に近い数に至った。
銀行が信用を失った理由は、銀行経営の失敗が相次いだためだ。2月末に石井定七事件、11月下旬に京都の日本積善銀行(同行頭取に対する巨額貸し出しの回収難が主因)事件、熊本の九州銀行が破綻するという問題が表面化して、国民の間に銀行に対する危惧が生じた。
12月になると、政府および日本銀行が銀行救済に乗り出し、ようやく収まった。これで越年することができたが、銀行不安の膿が出てしまったわけでは決してなかった。
この年は、証券業界にとっても良くなかった。名古屋株式取引所は「年初堅調を示したものの、貿易の逆調等から振わず、閑散低調のうちに年を終わった」と記している。〔参考文献『名古屋証券取引所三十年史』〕
著名な物理学者アルベルト・アインシュタインが、11月17日、神戸港に到着した。人々はこの物理学者を一目見ようと、行く先々に押しかけて熱狂的な歓迎ぶりを示した。アインシュタインは東京帝国大学での学術講演をはじめ、仙台・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡などでも一般向けの講演を繰り返し行った。
次のページ どえらい人物 矢田績が名古屋に戻り名古屋財界の〝ご意見番〟に
Copyright(c) 2013 (株)北見式賃金研究所/社会保険労務士法人北見事務所 All Rights Reserved
〒452-0805 愛知県名古屋市西区市場木町478番地
TEL 052-505-6237 FAX 052-505-6274