「山高ければ谷深し」という言葉がある。
これは景気を先読みするうえで、教訓となる言葉だ。大正時代は第一次世界大戦が勃発した。日本は戦場から離れていたために特需を受けた。おかげで大好況になり、成り金がウヨウヨ。だが、貧乏人が急に成り金になると、ろくなことをしない。足元を明るくするためにお札に火を付けたバカもいたとか。
だが、戦争が終わると、今度は恐慌に陥った。モノが売れなくなり在庫の山がたまった。その在庫の時価も暴落してしまった。宴に酔い痴れていた成り金たちは、あっという間に倒産し、路上生活のルンペンに成り下がった。
「災害は繰り返す」という言葉がある。
大正12年(1923)、関東大震災が起きた。9月1日の昼頃に発生し、食事の準備で火を使っている家庭が多かったので、火は東京中に燃え広がった。犠牲者は10万人にも及んだ。
このように大正時代には、多くの難局があった。一難去って、また一難というのが、当時の日本人の率直な感想だったのではないかと想像する。
だが、そんな時勢にあっても難局を見事に乗り切ったところがある。好景気であっても浮かれることなく、地味に経営して、しっかりと自己資本を積み上げる。そして恐慌に陥った時も泰然と経営して、慌てることなく従業員の暮らしを守る。日頃から堅実経営に努めてきたので、不況時になると逆に積極策に転じることもできた。相場が暴落した商品をどんどん買い取り、顧客に安く提供して喜ばれた。そんな経営者が、激動の時代を生き残り、その後に大発展を遂げるのである。そんな事例が、ここ名古屋でも多数みられる。本書では、それを紹介したいと思う。
平成28年1月 北見昌朗
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