ノリタケなどの森村グループの創業者である森村市左衛門が生まれたのは天保10年(1839)であった。もとは馬具などの商いをしており、16歳の時に安政2年(1855)の大地震によって家も家財も失った。そこで露店などをして家業を立て直した。
安政5年、日米修好通商条約批准のため、アメリカに幕府使節団が派遣された。この時、当時の国際通貨となっていたメキシコ・ドルに日本の金を換金する仕事を引き受けた。ところが貨幣の換金率が日本にとって不利であった。また、海外の品を売買する仕事も手掛けたが、日本の金銀が安い価格で海外へ流出していることを知った。市左衛門は福沢諭吉の助言のもと、外貨を稼いで、その金で海外に流出した日本の金銀を取り戻そうと考えた。
明治9年(1876)、弟の森村豊とともに貿易商社「森村組」を創立した。これが日本の貿易業界の草分けとなった。市左衛門は内務省観商局の支援と福沢諭吉の協力によって、豊をニューヨークへ派遣する。豊は明治11年にニューヨーク六番街に輸入雑貨の店「モリムラブラザーズ」を開業し、陶磁器、漆器、掛軸など、日本の伝統的な品物を販売し、好評を博した。日本に残った市左衛門は、アメリカへ送る商品の仕入れから荷造り、書類の作成などに一人で取り組んだ。
商売は順調に伸び、明治12年には小売業から卸売業へと転換し、日常の食器として使われる陶磁器を中心に扱うようになった。そして明治37年には現在のノリタケカンパニーリミテドの前身である日本陶器合名会社を設立し、さまざまな種類の陶磁器を扱うようになった。その後、大正6年(1917)には衛生陶器部門を分離して東洋陶器(現・TOTO)、大正8年には碍子部門を分離して日本碍子(現・日本ガイシ)などを設立した。
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