あとがき 名古屋の旧町名を復活させよう

 本書を著すにあたって、著者は「場所」にこだわった。人間は場所さえわかれば、なんだ、あそこかとすぐ分かるようになるからである。意外に身近な場所だと、そこで起きた歴史の出来事も急に身近に感じるようになるものだ。

 「場所」には「地名」がある。問題は、この地名だ。昔の本は、旧町名で書かれているので、現代人が読むとチンプンカンプンになってしまう。だから、本書は明治時代の古地図を紹介しながら、旧町名および現町名の両方で解説した。

 それにしても惜しいと思うのは、町名の喪失である。昭和40年(1965)頃に市街地を中心にして、それまであった町名を消して、丸の内、錦、栄などとしてしまった。これにより清須越以来の町名が全部なくなってしまった。

 著者は、この旧町名の廃止に関して、市役所の幹部に文句を言ったことがある。だが、それに対する答えは「住居表示法に基づいて合法的に変更された」というものだった。著者はなんとも味気ないと思った。

 だいたい、町名というのは固有名詞だ。そこには歴史や文化があるのだ。それを勝手に変えて良い訳がない。そんなことは、先祖に対する冒とくだ。

 著者の考える最も不名誉な町名は「丸の内」である。いったいなぜ「丸の内」なのか? お堀の外にあって、丸の内? そんなことがあるわけがない。そこは長者町とか、桑名町とか、由緒ある町名があって、みなそれを誇りにしてきたのだ。御三家筆頭の尾張藩としてのプライドはどこにいったのか?

 著者はいま「名古屋の旧町名を復活する有志の会」に参画している。旧町名の復活は、歴史の復活である。歴史の復活は、名古屋の復活である。心からエールを送りたい。

 頑張れ! 名古屋人

 頑張れ! 名古屋商人

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序文

第1部 明治前期

第2部 日清・日露戦争時代

第3部 明治後期

第4部 「旧町名」を語りながら

碁盤割と呼ばれた名古屋の街並み
興味深い旧町名 その① 
長者町
興味深い旧町名 その② 
伝馬町
富豪はどこにいたのか? 旧町名をもとに調査してみた
電話帳から垣間見る明治名古屋商人の活躍